十二

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 こちらの方は、探すまでもなく、建物の側面に沿って上りの階段があり、それが地下にも続いていた。  降り口に顔を近づけてみると、ちらちらと揺れる灯りのようなものと、微かに爆ぜる音がする。  ――これは怪しい。  マヒワは地下に降りる階段に足をかけた。  腰をかがめ、慎重に降りていく。  地下室はひんやりとしていているが、カビや埃のジメジメした感じはない。  むしろ、普段から使われているようで、清潔感がある。  そして、ほのかにあまい香り。  地下には、一階にあった物よりひとまわり小さい木箱が、ひとの背丈ほどの高さに積み上げられていた。  マヒワは蓋の少し開いている木箱に近づき、なかを調べた。  なかには手のひらほどの大きさの紙があった。  紙は正方形で、表面がつるっとしている。  一つひとつがちょうど掴みやすい大きさで束ねられていた。  ――これが「薬包紙」という紙ね。  先ほどより、爆ぜる音が大きくなり、甘いにおいも強まったような気がして、マヒワはあたりを見渡す。  先ほど降りてきた階段の裏側に、さらに地下へと続く階段があった。  階段に近づくにつれて、爆ぜる音とにおいとが強くなる。  たぶん、何かが燃えているはずなのに、不思議と煙は多くない。  それに人の動く気配がする。  マヒワは背負っていた荷物から木刀を取り出すと、左手に持って、階段を下りていった。  この地階の奥の方で、木箱が燃えていた。  爆ぜる音はこの音だったのだ。  地下室全体に甘いにおいが充満している。
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