十三

4/21
前へ
/220ページ
次へ
 マヒワは眉間にしわを寄せ、記憶をたどっているようだった。  マヒワが急に四つん這いになった。  額を地面に付けて、唸り声をあげる。  ――えーっと、何かを思い出そうとしていらっしゃるのかしら?  いままでにも、マヒワの意味不明な行動はよく目にしているので、マヒワが壊れたとは思わなかったが、手を貸してよいものかどうか、はらはらして見ていた。  そのとき、建物の裏口の木戸が開いた。  ――!  スイリンの反応は早い。  マヒワを背にかばうと、短刀を左手に逆手に構え、右手には目潰し粉の入った袋を握っていた。  マヒワも地面を転がって、何とか片膝をついた姿勢で構えをとった。  武器を探したら、マヒワの木刀と荷物が先ほど倒れていた場所に置いてあった。  慌てて、木刀を引き寄せる。  扉からは仮面を被った男が顔を覗かせた。  男は、スイリンを見て驚いたようだが、その後ろのマヒワを見て、 「あっ! 意識が戻ったようですね」  と言った。  スイリンはなおも警戒していたが、相手から殺気が感じられないので、判断に迷った。  仮面の男は木戸から出て姿をさらすと、スイリンにお辞儀をした。  すると、もう一人の仮面の男が、同じように出てきた。  ――え? 二人いたの?  とスイリンもマヒワも驚いた。 「お水、飲まれました?」  もう一人の仮面がスイリンに問いかける。  スイリンは思わず頷いた。  それくらい敵意が感じられない。 「それなら、もう大丈夫ですね」  仮面の男たちは、道で倒れている人を助けるような所作で、二人に近づいてきた。
/220ページ

最初のコメントを投稿しよう!

22人が本棚に入れています
本棚に追加