十三

6/21
前へ
/220ページ
次へ
「スイリンさん! おじさんが見つかったの! 早く! 早く、助けに行かないと!」  記憶のつながったマヒワが、大慌てで、スイリンの肩を掴んで揺すった。 「えっ、父が見つかりましたか?」  マヒワに激しく揺すられながら、スイリンは何とか声を出した。 「向こうの建物の地下で見つけたのはいいけど、おじさんの怪我がひどいから、誰か呼んでこようと思って――早く行かなきゃ!」 「じゃあ、この建物の中を通って……」  しかし、スイリンの言葉は少年たちに遮られた。 「それはだめです。この中でいま、作業員の方たちが集められています。おそらく全員殺すつもりだ、と先生が言ってました」 「その、先生は?」 「一人で残って、様子を窺っていらっしゃいます。機会をみて割って入るとおっしゃってました」 「それで、ぼくたちが助けを呼びに出てきたんです。軍が助けに来てくれたようなので」  少年たちの言葉を聞いたマヒワは、木剣を持って立ち上がると、その場で何度か跳躍し、からだをほぐした。  スイリンから長弓と矢筒を受け取ると、 「よし、あたしが先生を助けに行く。スイリンさんはおじさんを、お兄ちゃんたちは助けを呼んできて!」  いい終わると、マヒワはすでに動き出していた。 「承知しました、お嬢様」 「はい!」  マヒワは裏口の扉に手をかけると、スイリンの方を振り返って、 「スイリンさん、向こうの建物の一階、厨房に地下に降りる階段があります。一人じゃ無理だから、お仲間さんたちを呼んで」  と助言した。  スイリンは頷くと、少年たちと建物の表の方に消えていった。  マヒワは裏木戸を少し開けて、からだを滑り込ませた。
/220ページ

最初のコメントを投稿しよう!

22人が本棚に入れています
本棚に追加