十三

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 建物の中は、高い窓から光が斜めに入ってくるものの、全体的に薄暗いので、物を判別しにくい。  しばらく戸板に背を貼り付けてなかの様子を窺った。  天井からつり下がった木箱に、積み上げられた木箱と荷馬車。  ――ここまでは先ほどと変わらない。  ただ、今回は車輪の傍にひとが倒れていた。  マヒワは積み上げられた木箱に身を隠しつつ、前に進んだ。  素早く周辺も確認する。  積み上げた箱の上に弓矢を番えた体勢の戦闘員が一人ずついて、合計三人。  上を見ると、吹き抜けの二階に一人。  こちらも弓矢を持っている。  さらに荷馬車の方に近づく。  かがり火が見えた。  炎に照らされた真ん中の広い空間には、すでに三人の作業員が倒れていた。  さっき雑木林の火災を消そうと頑張っていた人たちだ。  まだ立っている作業員は四十人ほどで、その周りを囲むように剣を抜いた六人の戦闘員がいた。  ――敵は、十人かな?  ――いや、もうひとり。  最後のひとりは黒ずくめだ。  同じような戦闘服を着ているが、くちばしの生えた仮面に頭巾を被っている。  それらのすべてが、墨で染めたような黒で統一されている。  ――烏衣衆!  しかし、その烏衣衆は片腕を後ろにねじり上げられて、喉には剣先が突きつけられていた。  突きつけているのは、上唇にひげを蓄えた、白髪交じりの中年の男性だった。  ――あのおヒゲさんが、たぶん先生ね……。  おそらく敵の頭目格の烏衣衆を人質にとって、作業員の解放を狙っているのだろう。  それにしても、先生には不利な状況だ。  ――気迫で押すにも、限度があるわよ。
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