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建物の中は、高い窓から光が斜めに入ってくるものの、全体的に薄暗いので、物を判別しにくい。
しばらく戸板に背を貼り付けてなかの様子を窺った。
天井からつり下がった木箱に、積み上げられた木箱と荷馬車。
――ここまでは先ほどと変わらない。
ただ、今回は車輪の傍にひとが倒れていた。
マヒワは積み上げられた木箱に身を隠しつつ、前に進んだ。
素早く周辺も確認する。
積み上げた箱の上に弓矢を番えた体勢の戦闘員が一人ずついて、合計三人。
上を見ると、吹き抜けの二階に一人。
こちらも弓矢を持っている。
さらに荷馬車の方に近づく。
かがり火が見えた。
炎に照らされた真ん中の広い空間には、すでに三人の作業員が倒れていた。
さっき雑木林の火災を消そうと頑張っていた人たちだ。
まだ立っている作業員は四十人ほどで、その周りを囲むように剣を抜いた六人の戦闘員がいた。
――敵は、十人かな?
――いや、もうひとり。
最後のひとりは黒ずくめだ。
同じような戦闘服を着ているが、くちばしの生えた仮面に頭巾を被っている。
それらのすべてが、墨で染めたような黒で統一されている。
――烏衣衆!
しかし、その烏衣衆は片腕を後ろにねじり上げられて、喉には剣先が突きつけられていた。
突きつけているのは、上唇にひげを蓄えた、白髪交じりの中年の男性だった。
――あのおヒゲさんが、たぶん先生ね……。
おそらく敵の頭目格の烏衣衆を人質にとって、作業員の解放を狙っているのだろう。
それにしても、先生には不利な状況だ。
――気迫で押すにも、限度があるわよ。
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