十三

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 いまはちょうど均衡が保たれていて、誰も動けないが、動いたら最後、先生は危ない。  いまわかることは、戦闘員たちにとって、頭目である烏衣衆は見殺しにできない重要人物であるということ。  ――烏衣衆は先生に任せるしかない……。  ――ならば。  マヒワは、積み上げた箱の陰に移動し、長弓に矢を番えると、二階の戦闘員を狙った。  放たれた矢は、二階の戦闘員を吹き飛ばした。  派手な音をたてて肩を射貫かれた戦闘員は二階の床に転がった。  そのときに生じた派手な音で、一階にいた連中の視線が二階に向けられた。  その機を捉えて、マヒワは一番近い箱積みの上にいる戦闘員に接近すると、弓と矢筒を奪って、蹴り落とした。  戦闘員は、箱積みの上を転がり落ちて、床に伸びた。  全員が驚いて、音のした方に顔を向けた。  床に伸びた戦闘員に全員の視線が釘付けになっているうちに、マヒワは次々と矢を放った。  奪った弓は短弓だから、連射ができる。  狙いは、木箱の上の戦闘員たち。  敵の弓兵を優先して無力化する。  弓兵を全員片付けたところで、地上の者たちが、マヒワに気づいた。  マヒワは更に地上の一人を射貫き、地面に飛び降りた。  弓と矢筒を捨てて、木剣に持ち替える。  マヒワの木剣は芯に鉄を溶かし込んでいるので、真剣で切りつけられても、防ぐことができる。 「御光流のマヒワ。助けに参りました」  先生はその一言で、すべてを理解したようだ。  そして、理解した者がもう一人。  烏衣衆は、ねじり上げられた腕を軸に側転し、跳ね上げた脚で、突きつけられた剣を払った。
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