十三

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 烏衣衆は側転を繰り返し、立ったときには、片手に剣を構えていた。  その剣の形を見て、マヒワの心臓が跳ね上がった。  ――まさか、お母さんを殺した奴ら?  烏衣衆に握られていた剣は、とても細長い刀身をしていた。  マヒワの母のからだを貫いた剣。  見間違えようがなかった。 「マヒワ殿!」  先生が叫ぶ。  我に返ったマヒワが間一髪で転身した。  剣が空を斬った。  マヒワが烏衣衆に気をとられている隙に、戦闘員たちが迫ってきたのだ。  戦闘員たちは連携のとれた攻撃をマヒワに仕掛けてくる。  木剣で凌いでいることもあるが、マヒワにしては珍しく、攻防が後手に回っている。  次々に繰り出されてくる剣を裁くのに、精一杯だった。  攻撃に転じる切っ掛けが掴めない。  幼少の頃の記憶が、暗闇で母の戦っていた姿が、頭の中に浮かんでくる。  マヒワは目先の闘いに集中しようとするが、烏衣衆の姿を見るたび、記憶に意識が向いてしまう。  ――あーっ、もう! 流れがよくない!  その流れを変えたのは先生だった。  先生は、烏衣衆を捕らえるのをあきらめ、マヒワの援護にまわった。  戦闘員たちは、マヒワの攻撃に意識が向いているので、死角に入るのは容易だった。  先生は瞬く間に三人を斬った。  戦闘員たちの連携が乱れた。  入れ違いに、マヒワが烏衣衆の抑えにまわった。  目の前の難敵がいなくなったので逃げられると思っていた烏衣衆は、マヒワの予想外の動きに逃げる機会を失った。  マヒワと烏衣衆はにらみ合ったまま、荷馬車の方に足を運んでいく。
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