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 イカルが王都守護庁で幾多の事件を手がけるうちに、おのれの手足となって諜報活動を行う部隊の必要性を痛感した。  そこで組織したのが、バンを(かしら)とする諜報部隊であった。  イカルがおのれの裁量で育て上げた部隊なので、王都守護庁の組織の外に存在する極秘部隊であり、その存在は副官のみに伝えていた。  マガンの屋敷に住むようになったバン本人が言うには、「お嬢さまのことが心配で心配で、少しでも傍にいたい」とのことである。  今回の事件では、バン自身が責任を重く感じている。  もっと自分がうまく立ち回っていれば、マヒワは両親を失わずにいられたのではないか、と忸怩(じくじ)たるものがあった。  バンは、毎日のように王都守護庁へ行っては、捜査の進捗や治安部隊の再編のことなどの情報を集めて、マガンに報告していた。 「――宰相様は、イカル様の副官だったトクト様を王都守護庁長官の代理として任命され、早急に王都の治安と王宮の警備の機能を回復しようとなさっていやす」  情報を集めるうちに、役宅と私邸を襲った黒ずくめの者たちは、紗陀宗主国の放った暗殺者であることがわかってきた。 「その黒い奴らは、『烏衣衆(ういしゅう)』というらしいんですがね。そいつらが指揮を執って、祭祀会場の警備隊を操っていたようです」 「あの日に捕らえた者たちは、その後どうなった?」 「背後関係や動機などを聞き出すために、かなり手荒い手段をつかっていますが、全員だんまりを貫いていやす」 「相変わらず何事かを待っている様子か? 助けが来るのを期待しているような雰囲気があるらしいが……」
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