十三

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 マヒワは烏衣衆の逃げていった先を見る。  木箱の落下する重みを利用した烏衣衆は、二階まで跳ね上がって、窓から出ようとしていた。  裏口の方向になるので、砦の防壁に近い。  ――窓のところまで木箱が積まれていたはず。  防壁に逃げるか、地上に逃げるか。 「わたしが二階から奴を追いかける。マヒワ殿は下から頼む」 「はい!」  言うが早いか、先生はもう二階にたどりついていた。  先生は、あの状況で、烏衣衆の動きを追いながら、マヒワを助ける判断をしたことになる。  ――先生、すごい!  負けじと、マヒワも長弓と矢筒を拾い上げ、裏口から外に出た。  烏衣衆は防壁に逃れていた。  窓から出た先生も木箱に脚をかけ防壁に飛び移り、後を追っていた。  マヒワは地上から追いかけた。  背後で積み上がっていた木箱が崩れ落ちた。  烏衣衆が地上に飛び降りるのが見えた。  すでに砦の戦闘は終わっていた。  ならば――、  マヒワは走りやすい砦の中央の通路にでて、脚を速めた。  右手の倉庫のような場所から、馬が飛び出して来るのが見えた。  馬には烏衣衆が乗っていた。  その先の門は開いていた。  軍が突入したときに開けたのだ。  ――馬なら、ほかにもいるはず!  マヒワは荷馬車に馬が繋がれていなかったことを思い出していた。  とりあえず、倉庫の方に向かおうとした矢先、 「おまえらー! 何をしでかしたか、わかっておるのかーッ!」  と怒鳴り声が聞こえた。  マヒワが走りながら声のする方向を見ると、捕らえた戦闘員を前に説教中の将軍がいた。  その背後を烏衣衆が駆け抜けていった。
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