十三

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 その姿を、捕まった戦闘員たちが目で追った。  ――おい、将軍! お説教してる場合じゃない!  と、心の中で毒づいて将軍にジト目を向けていると、馬が視界に入った。  ――おおっ!  馬車馬より軍馬の方が圧倒的に速い。  マヒワの脚が加速する。 「将軍さまーっ!」 「おー、マヒワさーん!」  師範代は、マヒワから「将軍さま」と呼ばれて満面の笑み。 「お馬さん、お借りしまーす!」  マヒワは走る勢いにのって、将軍の馬に飛び乗った。  口をパクパクさせている将軍を残し、将軍の愛馬はマヒワを乗せて走り去った。  マヒワは門を出てからぐんぐん馬の速度を上げた。  まだ陽が完全に落ちきっていないので、先を行く烏衣衆の姿を何とか判別できる。  マヒワは手綱を鞍の突起に巻き付けると、脚で馬を操りながら、上半身を安定させた。  馬上で長弓に矢を番え引き絞った。  放つ。  一矢目、外した。  ――まだ遠い!  しかし、その差は縮まっている。  呼吸をととのえ、二本目の矢を番える。  烏衣衆の背に的を絞り、放った。  矢は思ったより手前に落ちた。  ――えっ? そうか、坂道だった。  坂道は、丘の頂にある砦から、なだらかに下っている。  マヒワは、坂道の途中の傾斜角度の違いを計算に入れて、三矢目を放った。  狙い違わず、烏衣衆の背に矢が突き立った。  烏衣衆が馬から落ち、馬はそのまま走り去るのが見えた。  ようやくマヒワが追いついた。  マヒワは馬から下りると、弓を握り直し、落馬した烏衣衆に近づいていった。  弓の先で、頭巾を跳ね上げ、仮面を外した。  烏衣衆は舌を噛み切って死んでいた。
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