十三

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   〇〇〇  マヒワは、頭目の烏衣衆を退治した後、砦に戻って将軍を探した。  将軍は副官を伴って作業員たちに事情聴取をしていた。  マヒワが将軍に馬を返そうとしたとき、将軍はさすがにムスッとしていた。 「将軍さまの駿馬はすばらしいですね。あっという間に敵に追いついてくれました」  とマヒワが馬を褒めても、将軍の機嫌が直る気配はない。  マヒワが将軍の方を向いて何かいおうとしても、視線が合わないよう、あさっての方向を向いてしまう。  面倒くさいこと、この上ない。 「おかげさまで、烏衣衆を退治できましたし、軍の皆さんのお力で砦も解放できましたし、すべて将軍さまのお手柄ですね。宰相さまもよろこばれますよ、きっと。さすがです!」  とマヒワが褒めちぎって、すべてを「将軍の手柄にしていいよ」と、含みを持たせたところで、将軍の頬がゆるみはじめた。  ――つくづく現金なヤツ……。  副官の方をちらりと見ると、思った通り、軽蔑のまなざしを将軍に向けていた。  これで軍としてまとまっているのか、実に怪しい。  マヒワは手綱を将軍の手に握らせて、その上から自分の両手で包んで、ぶんぶん振ってやると、将軍のご機嫌は完全に直った。  ――将軍、ちょろすぎです。  マヒワは心の中で舌をちろりと出した。  これ以上勘違いさせると、どんどんつけあがりそうなので、さっさと手を引っ込めた。  名残惜しそうにする将軍。  将軍が何かをいおうとして口を開けたのを見て、マヒワは一礼し、その場をあとにした。 「くうーっ」  と、将軍は意味不明なうめき声をあげて、こぶしに歯を立てた。
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