十三

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 そんな将軍の姿を後目(しりめ)に、マヒワはスイリンたちの姿を探した。  マヒワは、バンの監禁されていた建物の中に入った。  食堂の扉を入ってすぐに、大きい食卓のうえにバンが寝かされているのが目に入った。  先生と孤児院の二人の兄がバンに応急措置を施していた。  兄たちがバンのからだを拭いて、度の強いお酒で傷口を消毒していく。  消毒されるたびにバンからくぐもった声が聞こえてきた。  きれいになったところから先生が手当てをする。  スイリンたち諜報部隊は一歩下がったところで、その様子を見守っていた。  マヒワはスイリンの横に並んで手を繋いだ。  スイリンも手を握り返してくる。  ほかの隊員たちも沈痛の面持ちでバンを思い遣る。 「骨折はないが、神経が参るような拷問を繰り返していたようだな。並の精神なら発狂していたかもしれない。よく耐えなさった」  ようやく先生の手当が終わったようだ。  バンは全身に包帯を巻かれて、ほとんど目だけしか開いていない姿になっていた。  ――なんか既視感……あたしと関わると、みんな包帯ぐるぐるになるような気がする。  スイリンがマヒワから手を離すと、隊長の顔つきになった。  隊員たちにバンを荷馬車に乗せるよう指示を出す。  ロウライの病院に運んで本格的な治療を施すためである。  バンが担架で運び出されたあと、もう一人、奥の部屋から運び出されてきた者がいた。  雑木林の消火活動の折に、マヒワが倒したあの大男であった。  ――あれ? まだ、意識回復してない?  ――大丈夫、かな……?  さすがにマヒワも心配になってきた。
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