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「ひょっとして、あのひともお嬢様が倒されました?」
「ええ、ちょっと、身の危険を感じたもので……」
マヒワは恥ずかしそうに、頬を指先で掻きながら言った。
「あのひと、革製とはいえ、頑丈な胸当てをつけていましたが、まさかとは思いますが、素手で当て身を入れられましたか?」
「ええ、そのまさかです。防具の上から当てました」
「でも、どうして急所に当たったのでしょう? 胸当てにはへこんだ跡はありませんが……」
「ちょっとした、コツがあって。その……、打突の衝撃が最大になるところを防具の裏側の、少し奥に意識するとできるんですが、えっと、その、わかりませんよね……」
「なんとなくわかりますが、できるとは思いません」
「ふつーは、そうですよねぇ……」
マヒワとスイリンのやりとりを聞いていた、先生も首を振っていた。
先生の首振りが、感心しているのか、あきれているのか、気になるところではあったが、自分以外にはできないことが、なんとなく判った。
「あのひとは、大丈夫そうですか?」
と、マヒワは先生に尋ねた。
「ええ、大丈夫ですよ。暴れられても困るので、薬を飲んで寝てもらっています」
その返事を聞いて、マヒワは安堵した。
バンと大男が運び出されると、スイリンが、
「お嬢様、わたくしも一緒に行ってまいります。では、のちほど」
と一礼して、隊員たちの後を追って、建物を出ていった。
「気丈なお嬢さんだ。自分の役割をしっかりと心得ていらっしゃる」
と先生がスイリンを見送って言った。
バンがスイリンの父親であることを聞いたようだ。
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