十三

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「王都守護庁の諜報部隊が出張ってきたとなると、あの頭目は宗廟事変と深い関わりがあるようだな……」  とつぶやく先生は、さすがに頭の回転が速い。 「マヒワ殿は、御光流とおっしゃったかな?」 「――はい」 「それならば、マガン元帥の流派でいらっしゃる」 「そうです。あたしはマガンの娘、マヒワです」 「そうですか。わたしはコエンと申します。こちらの二人は、ムーサとセトです」  コエン先生に紹介された二人が、マヒワにお辞儀する。 「あ、あの、地下室では助けて頂いて、ありがとうございます」  マヒワは、二人に頭を下げて、お礼する。 「いえいえ、マヒワさんには、かなり手荒いことをして、手際もよくなくて、すみませんでした」  と二人の青年もマヒワに頭を下げた。 「いや、あなたの口を無理やり開いたのは、わたしでした。この子たちは、何も手荒なことをしていません」  とコエンが二人を庇うようなことをいっておきながら、 「それにしても、あぶないところでしたよ。もう少しのところで、マヒワ殿、あなたは死んでいたかもしれません」  と怖いことをいう。  あのとき地下室は証拠隠滅のために魔香とその解毒剤の入った木箱を燃やしていたそうで、魔香が上の階まで充満していただけでなく、酸素が少なくなっていたらしい。  コエンとセトが解毒剤の製造方法を記した帳面を回収し、ムーサが消火活動をしていたが、 「ぼくたちの連れていた小鳥が死んでしまって、もう逃げないとあぶないと思ったところに、マヒワさんがふらふらになって入ってこられたんです」  とムーサがいった。
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