十三

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 あのとき両手を振っていたのは、入ってきてはいけない、という身振りだったとのこと。 「マヒワさん、地下室や穴の中に入るときには、必ず鳥かごをもって入り、まずはじめに、なかの鳥が生きていることを確認してから、下りるようにしてください」  とマヒワはセトから注意された。 「どうもすみません……」  実際、死にかけていたのだから、ただ謝るしかない。  三人が被っていた木製の仮面は、魔香を吸収するために鼻と口の部分に炭の粉を仕込んであったので、くちばしのようになっているらしく、同じように、 「マヒワ殿があれ以上魔香を吸われないように、炭の粉を詰めた布の袋をお口に当てました」  と、コエンがいった。 「そして、ぼくが解毒剤を飲ませたんです」  とセトが続ける。  何の打ち合わせもなく、あのときの見事な連携は「素晴らしい」の一言に尽きる。  危険な状況のなかで必死で助けてくれたのに、殺されたと思った自分を恥ずかしく思った。 「あれ以上、地下室にいることは限界だったので、みんなでマヒワさんを担ぎ上げて地上階まで退避したんです」  その後の展開はくだんのとおりだ。  ちなみに魔香は、葉巻に混ぜたり、お香に練り込んだりして、低温で燃焼させると、睡眠と幻覚の効果が抜群にあるが、直接燃やしたときにでる煙やにおいを吸引しても、それらの効果は弱いらしい。  このこともマヒワが軽症で済んだ要因のひとつである。 「ところで、コエン先生は、どのようにしてこの砦に入られたのですか?」  とマヒワはコエンに確認した。
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