十三

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 ――そういえば、「御光流のマヒワ」と聞いて、「剣聖」と反応しなかったのは、コエン先生が初めてかもしれない。  ――こっちから「剣聖」攻撃をかけて、どのように凌ぐのか、勉強しよう。  いいかげん、「人がそう呼んでるだけです」だけの受け応えでは、芸が無いにもほどがある。 「先生は、剣聖と伺いましたけれど、本当ですか?」 「十代の頃に剣術に嵌まりましてね。幻影流でしたけれど、師範が素晴らしい方でした。師範に褒めていただきたくて、鍛練を重ね、いつしか剣聖と呼ばれていました」  ――なるほど、本物は、剣聖であることを否定しない……か。 「先生は、幻影流なのですね」 「そうです。マヒワ殿の御光流とは術理がかなり違いますね。でも、剣術ならマヒワ殿の方が技量が上でしょう。わたしには、木剣で六本の真剣を凌ぎきる技量はありません」  ――なんだか、褒められているようで、バカにされているような……。  あのときは六人を相手にせざるを得なかっただけで、しかも、そのときの剣技ときたら、母の仇に動揺して、防戦一方だった。 「すみません。無謀でした……」 「特にマヒワ殿の弓の技術はすばらしい。もう(くら)かったのに、馬上であの距離を()てられるとは、わたしなど足下にも及びません」 「いやぁ、お恥ずかしい。いえいえ、それほどでも……」  確かに弓術のことは多少自慢に思っているが、  ――あぁ、だめだぁー。  照れ隠しに頭を掻いたりする自分に気づき、嫌になった。  ――もっと精錬された身のこなしをしたい。  心なしか、セトとムーサにも笑われているような気がしていた。
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