十三

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「しかし、こんなに長い間、孤児院を留守にするとは思いませんでした。あの子たちには苦労をかけたと思います」 「そう。先生が留守の間に、ライラちゃんに師匠になってほしいと頼まれたんです」  砦のなかで合流できたコエンたちは、脱出する機会を窺っていたのだという。  マヒワは、コエンがいない間の孤児院での出来事を、掻い摘まんで話した。 「それはそれは、ライラたちがとんだご迷惑をお掛けしました」  これまで起こったことを話していると、マヒワは宿屋に預けている子どもたちのことが急に心配になってきた。  気がつけば、もうすっかり日が暮れて、今日中に街へ帰られるか、怪しくなってきた。 「あのぅ……」 「何でしょう?」 「先生たちは、いまから孤児院にお戻りになるのですか?」 「ずいぶん遅くなりましたが、そのつもりです」 「明日、あたしがライラちゃんたちを孤児院にお連れしますので、よろしければ、あたしもしばらく孤児院にいていいですか?」 「それは構いませんが、マヒワ殿はいま廻国修行中なのでは?」 「コエン先生の元で、教えて頂きたいことがあります」 「剣術に関しては、マヒワ殿の技量以上のものを、伝授できそうにありませんが……」 「いえ、教えて頂きたいのは、剣術ではありません」  マヒワの意外な発言に、コエンはつぎの言葉を待った。 「あの闘いの時にもそうでしたが、先生が、乱戦状態でも的確な状況判断をなさって、即行動に移されていたのを見て、あたし感動しました」  マヒワであれば、仲間の頭上に物が落ちてきたのを見たら、己の身を挺して仲間をかばうので精一杯だったろう。
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