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「烏衣衆が助けに来るかもしれないんで、牢屋の見張りを増やされていますが、あっしの勘じゃ、助けには来ねぇと思いやす」
「わしもそう思う。逃げるなら、襲った直後だ。現にその烏衣衆という者どもは祭祀の会場からは全員逃げおおせておるようだしな」
「うまく言えねぇんですがね。牢屋に入れられている者たちの余裕振りを見ていると、なんか、こう、誰かに身の安全を約束されているような気がしやすね」
「それだよ、背後にいる奴は。となると、そうとう権力を持っている者しか考えられんな」
「罪人を無罪放免にですか? しかも、その罪人ってぇのは、王族様相手にやらかした奴らですぜ。宰相様にだって、そんな権力はございませんでやしょう」
「革命でもないのなら、王族の罪を裁けるのは、同じ王族……か?」
「あの事件で、生き残っている王族の方々は、当時の記憶を失くされている王と行方不明の王女のお二方だけか。あと王弟君がいらっしゃるが、とうの昔に王位継承権を放棄されて神職につかれてるので、これは除外してもよかろう」
「なるほど。でも、王様が黒幕だと、自作自演っていうことになりやすね。なら、王女様ですか?」
二人は顔を見合わせる。
「どうも、しっくりこねぇな」
というバンの言葉に、マガンも頷く。
「ほかに誰かいるな。王族の誰かが、絶対に、な」
「難しいですが、探ってみやしょう」
そう言うやいなや、バンはマガンに一礼すると、部屋を出ようとした。
「おい。これを遣え」
と言って、出て行こうとするバンの前に置いたのは、結構な金貨の入った袋であった。
「こりゃ、どうも。恐れ入りやす」
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