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 修練場のなかでは、百人ほどいる弟子たちのほとんどが集まっているようで、何重もの円座になっていた。  後ろの者がよく見えるように、円座の内側の者たちは座って、つぎが中腰というように頭の位置をずらして並んでいたが、いちばん外側はつま先立ちになっていた。  そして、みんなの視線は円座の中心に向けられていた。  弟子たちが注目する円座の真ん中では、一人の弟子を五人の弟子たちが取り囲んでいた。  全員が剣を構えている。  中心にいる弟子に、五人の弟子たちが一斉に打ち掛かっていった。 「あっ!」  余りに不利な状況に、マヒワはとっさに目を閉じた。  マヒワの耳に、ひとの倒れる音が届いた。  マヒワはさらに堅く目をつむった。  また、ひとの倒れる音が聞こえる。  ――また……。あれ? また? なんで、ひとりだけじゃないの?  不思議に思ったが、人が倒れているのは確かだから、怖くて、目を開けられない。 「おおっ……!」  という場内のどよめきを聞いて、マヒワはおそるおそる片方の目だけを薄くあけた。  マヒワが見たのは、真ん中にいた一人の弟子が立っていて、取り囲んでいた五人の弟子たちが倒れている光景だった。  真ん中にいる弟子は、息のあがることもなく、何事もなかったかのように立っている。  倒れている弟子たちを、近くにいた者が介抱しはじめた。  後で聞けば、刃引きをしていない稽古用の剣だから、本当にひとを斬ったのではなかったらしい。  このときは、流血を見なかったことにほっとしていた。  倒れていた弟子たちも意識が戻って、真ん中の弟子とともに整列すると、修練場の正面に一礼をした。
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