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その先には、マガンがいた。
マガンは大きくひとつ肯くと、
「みなの者、それぞれがよう頑張った。結果は、後日知らせる。これで今回の審査を終わる。今後も弛まず稽古に励むよう」
と締めの挨拶をした。
弟子たちは一斉に気合いの入った返事をすると、後かたづけを始めた。
その様子を、マヒワは息をするのも忘れて、見入っていた。
「強い! かっこいい!」
わくわくして、思わず声を出した。
その夜――、
マヒワはマガンに「剣術をやりたい」と言った。
マガンはマヒワの入門を許した。
それから三か月が過ぎようとしていた。
マヒワは入門を許されたものの、他の門弟たちと交わって稽古することはまだ許されていない。
年齢が若すぎるのと、からだが小さいのとで、ほかの門弟が気を遣って、稽古がやり難いだろうという判断があった。
しかし、マヒワとしては全く面白くない。
何しろ、毎日毎日、自分ひとりで剣を振ることしかしていないのだ。
剣を両手で握って、中腰になる。鍛練用だから重い。
重くても、へそから剣が生えているかのように剣を構える。
息を吸いながら、少しつま先立ちになり正面に大きく振りかぶって、気合いとともに一気に振り降ろす。
「――この鍛錬素振りを、からだができるまで繰り返すように」
とマガンがいうので、こればかり繰り返すのだ。
これを朝に二千回、昼から三千回、ひたすら繰り返す。
――からだが、できる、まで、やれって、いったい、どれだけ、なの、よっ!
剣を振り上げては、愚痴り、振り下ろしては、愚痴る。
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