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「あたしは、テンと一緒でないとつまらないけど、テンもそうなのかな……」  言葉が通じているのか、テンは後ろ脚をかき、軽くうなずくような動きを見せる。 「ふぅん。だとうれしんだけど……」  マヒワは馬房の中に入り、テンの傍に三角座りして、窓から星を眺めた。  テンが、マヒワの頭を鼻先でつついたりして、ちょっかいを出してくる。 「はぁぁ……。あたしひとりだけ、違うことさせられて。……ほかの人と同じ事してても、だめなことはわかってますよーだ」  マヒワは三角座りした膝の上におでこをのせて、思考をすりつぶすように、額をこすりつけた。 「みんなと違うことをさせられて、ひとりぼっちなのよね……」  テンがマヒワの髪を食んで、鼻息を吹きかける。 「わかってるよ。ひとりぼっちじゃないよね。テンもツキもいるし……」  でも、泣きたいのよ――という言葉をマヒワは飲み込んだ。  ――ひとりぼっちじゃない! 「そう……ひとりぼっちじゃないよ。あたしは、ひとりぼっちじゃなかったんだ……」  そうつぶやくマヒワの瞼には、末期の母から形見を渡されたときの情景が浮かんでいた。  それは、ルリが「いつもそばにいるから」といってマヒワに遺した、黄金に輝く獅子の帯鉤(バックル)だった。  獅子はルリの生まれ育った一族の紋章であった。 「ごめんなさい。お母さんも一緒にいるのを忘れてた……」  ――もう、だめ。  我慢したけれど、結局、その夜はテンの傍で散々泣いた。  明くる朝、いつものように修練場で素振りをするマヒワの腰には、母の形見があった。
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