序章

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 マヒワも異変に気づいたようで、起き上がるとすぐにたき火に土をかぶせた。  音から察するに、何者かが襲撃を受けているようだ。  二人は腰を上げると神殿跡から街道に出た。  くだんの場所はすぐにわかった。  暗闇に炎が立ち上っている。  二人は足音を忍ばせてさらに近づいた。  襲撃現場は、同じ遺跡の敷地内らしく、石版を敷き詰めた広場になっており、三両の馬車が止まっていた。  そのうちの一両が燃えている。  荷馬車は襲撃を受けておらず、客車だけが襲撃されているので、荷を奪うためではなく、乗っていた人物が目的のようだった。  客車に乗っていたと思われる家族は、すでに馬車から逃げ出し、広場の真ん中に身を寄せ合っていた。  その家族を守るように護衛隊が展開し、槍や剣で迫ってくる襲撃者たちに応戦している。  しかし、護衛隊の隊員たちは、敵と刃を交えているところに暗闇から矢を射られて、みるみる数を減らしていった。  マヒワとバンは闇の中を移動した。  弓を持った襲撃者の姿を見つけたら、バンが背後から口を押さえ、マヒワが当て身で気絶させて、弓の弦や腰帯で縛り上げていった。  その数、都合三人。  全員に猿ぐつわも噛ましているので、しばらくは声も出せまい。  弓矢を持った襲撃者を片付けたところで広場を見ると、応戦している護衛隊の隊員は早くも一人になっていた。  マヒワは、襲撃者たちの位置を見て取ると、広場に躍り出た。  移動しながら剣を抜く。  燃えている馬車の炎を反射して、マヒワの剣がキラリと光る。  マヒワは包囲網の外側から流れるように足を運んだ。
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