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マヒワの驚愕の表情。
「素振りの音もすごかったね。修練場の中で撃ち合っていても、聞こえていたよ。本当に空気が裂けるような音がしてね――」
俄然、マヒワのやる気に火がついた。
先ほどよりも気合いを込めて振ってみる。
「――惜しいけど、そんなに力んじゃだめだよ。ちからで振る限界の、もっと先へいくんだ!」
ノッジョの言葉が理解できず、素振りの動作が止まった。
「ちからのさき……ですか?」
「そう! なぜ、毎日毎日何千回も振ると思う?」
「ちからをつけるためだと思っていました……」
「からだのできていない最初のうちは筋力をつけるため、っていうのは正しい――」
ノッジョも、マヒワと同じ姿勢になって、素振りをやってみせる。
「それでね、筋力がつくと、ちからで振るようになる――」
ノッジョはやや大げさに筋力を込めて振ってみせる。
勢いがあって、マヒワの素振りより、はるかに大きい音がする。
「それでいいと思っている者は、ここどまり。でも、筋力を超えて鍛錬できる者は――」
とノッジョが言うと、姿勢が伸びて、真っ直ぐになり、空気を切り裂く音が、短く鋭い音に変わった。
剣を振り上げて下ろしても、姿勢は少しも傾かない。
「うわぁ、すごい!」
マヒワは思わず拍手していた。
それくらい、マヒワには、素振りをする姿がしなやかで美しく、そして厳しいものに見えた。
「表現するのは難しいけれど……筋力を超えると、大地と一体になった気がするね。そうすると、本当のちからがでてくるんだ。大地の底からね。こう、足の下からからだの中をとおって、剣の先へ――」
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