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「紗陀宗主国とつるんで王族の方々を襲撃するような輩ですぜ。つぎはどんなでかい仕掛けできやがるんだか、ちょっと想像できませんや」  バンがマガンのところで世話になり始めてから、いままでずっと事変の調査を進めてきた。  バンの諜報部隊がどれだけ探索の網を広げても、王女の行方がわからないだけでなく、宗廟事変の裏で糸を引いていた人物も浮かんではこなかった。  それでも有益な情報を掴むこともあって、そのような場合には王都守護庁の長官代理であるトクトにも提供し、連携をとってきたにもかかわらず、捜査は遅々として進んではいなかった。  事変から三年が経ち、実行犯たちからの聴取も、もはや新しいことは聞けそうにないと諦めてきた矢先の毒殺事件であった。 「もはや、王に対して同じ魔香の手は使えまい」 「王宮も以前よりも遙かに厳重なものになってます」 「とはいえ、今回も内部の者が関与していると思った方が良い。王の周辺にも同じような輩が潜んでいるかもしれぬ。まったく気が抜けんな」 「ところで、マガン様」 「なんじゃ?」 「前々から、疑問に思っていたのですが――」 「マヒワのことか」 「そうです。なぜ、烏衣衆の奴らはイカル様の私邸を襲ったんで?」 「決まっておろうが。あれは王族の襲撃であろう」 「なら、まさか、ルリ様が王族であるとか」 「そのまさかじゃ」 「うーん」  バンはマガンの発言に腕を組んで考え込んだ。 「まぁ、理解できんのは無理のないことでもある」 「そんなぁ、もったいぶらねぇで、教えてくだせぇ」 「いまさらだが、儂が準王族であることを知っておるか?」
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