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「ルリを王族に引き揚げ、さらに準王族のイカルと婚姻関係を結ばせることで、やっと、第三王妃のところの部族長を納得させたようだ。それで本当に失態の回復になっているのか甚だ疑問ではあるがな……」 「ああ、それで、ルリ様が王族ということになったんでやすね」 「その結果、命を狙われることになったものと思える」 「ということは、マヒワお嬢さまにも、王位継承権がおありで?」 「王弟のアビ様は、神官長におなりになるときに王位継承権を放棄なされている。もし、行方不明の王女がすでに身罷られているのならば、マヒワが王位継承権一位ということになる」 「うへぇ、あぶねぇ、あぶねぇ」 「そう、これから相手が何を企んでいるにせよ、王位に就くことが目的ならば、マヒワの命を狙ってくる可能性も考えた方がよい」 「そんなに継承権の高いお方をお守りするには、お味方が足りません」 「いかにもそうじゃ。でな、儂はマヒワを鍛えに鍛えて、自分で自分の身を守れる人間にしたいと思うておる」 「そうはいっても、組織対個人じゃぁ、いくら鍛えても結果は見えてますぜ」 「だれが、個人といった」 「……?」 「自分の身を守るのが個人である必要はなかろう。仲間をつくればよいではないか」 「では、あっしがお仲間に」 「当然であろう。それにな、ここは御光流の家元じゃ。貴族の子弟も沢山おる」 「ああ、それで剣術を」 「幸いなことに、マヒワには天賦の才がある。でもな、バン――」 「へぇ、何でございやしょ」 「マヒワに、王位継承権のあることを絶対に言うな。このことは、儂と宰相、そしてお前だけが知っておればよい」
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