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「知れば利用する輩が現れるということですね」  バンの言葉に、マガンは大きく頷いた。 「人間の浅ましく(けが)れた(わざわい)の中に、マヒワをこれ以上巻き込んでやりたくないのよ」  今度は、バンが大きく頷いた。 「あとの始末は、われわれ年寄りでつけるってことですね」 「おいおい、お前と一緒にするな。そこは『年寄り』ではなく、『大人』というところであろう」 「いや、どうも、とんだ失言を。恐れいりやす……」  しどろもどろするバンを見て、マガンの高笑いが響いた。  それから八年――、マヒワが御光流剣術を始めて、ちょうど十年が経った。  修練場に気合いが響き、声援が挙がっていた。  天高く気合いを響かせているのは、マヒワだった。  この日は朝早くから弟子たちが修練場に集まっていた。  マヒワの百人抜きの試錬を行うためである。  百人抜きは、始まりから終わるまで座ることも寝ることも許されない。  水分補給も食事も立ったまま。  用を足すときだけ場外にでることを許されるが、戻ってくるまでの時間が長ければ失格となる。  百人抜きに、勝ち負けはない。  百人を抜いた段階で、試錬を受ける者が立っていれば良しとされた。  一人ずつ打ち掛かってくるとは限らない。  複数人に取り囲まれて、一斉に打ち掛かられる場合もある。  相手を倒すか、相手が負けを認めるかで、つぎに進む。  練習用の剣を使うが、まともに当たるか突かれれば死ぬこともある。  マヒワが剣術の修行をはじめて、十年目の秋。  マガンから百人抜きをするよう言い渡された。  百人抜きを達成すれば、剣術界で最年少。
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