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 当然、これらの地域では軍馬も育成されており、定期的に軍事訓練も催されていた。  そして、王都にもっとも近い位置に王都守護庁の長官に下賜された牧場があった。有事の際に駆けつけやすいようにという配慮であった。  いまは長官の後任が決まっていないので、マガンが宰相に掛け合って、いったん王家の所有に戻し、マガンが牧場を管理している。  元帥の肩書きは、名誉称号となったいまでも、かなり効くようだ。  マヒワは愛馬のテンやツキに跨がって、この牧場まで遠乗りするのを日課にしていた。  母馬のツキは歳をとったせいか、最近、天候の悪い日や寒い日には遠乗りを嫌がるようになった。  そのようなときは、ツキを留守番にして、テンと一緒に出かけるようにした。  この日の朝も肌寒く、ツキが出かけるのを嫌がり、マヒワはテンと牧場にきていた。  牧場に着くとマヒワは、馬上で短弓から剣、剣から短弓へと連続して遣う技を工夫する。  立木や杭をたてて、それらを標的にして、いろいろな角度や距離から矢を放つ鍛練や、騎乗で標的に近づいて剣で打つという鍛錬もした。  最近では、二本の矢を同時に放つことも試している。  扱っているのが短弓だけに、二本の矢を同時に放つと威力が弱まってしまう。思うように矢の飛距離も伸びない。  それでも、矢への指の添え方や、弓弦の引き分ける感覚などを何度も試行錯誤して、ようやく最適な距離感がつかめてきた。  一本の矢を放ち、間を詰めて、二本の矢を同時に放つ。  さらに間を詰めたら剣の間合いになる。  離脱しながら、後ろ向きの一矢。  同じ動作を何度も繰り返すうちに、昼になった。
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