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「なんだ、唐突だな。なんぞ思案のあってのことか?」 「さらに剣術の技を極めるためでございます。できましたら、剣術の枠を超えてみとうございます」 「もうやりたい放題やっておるだろう。いまさら枠を超えるなどと……」  マヒワは神妙に申し出て承諾を得ようと思っていたが、マガンが拒むわけはないと思い直し、本音をいうことにした。 「――実は、今朝方牧場の方へ参りましたところ、狼を狩る輩を見かけ、追い払いました」 「王家の牧場でか?」 「はい。盗人として、その場で切り捨ててくれようか、と脅しましたところ、這々の体で逃げていきました」 「狩人か?」 「狩猟の格好をした者が四人いましたが、どこぞの商人風の男が狩りの助勢として雇った者たちのようです」 「それで、その者たちとお前の廻国修行とに、何の関係がある?」 「はい。問題とするのは、狩りをしていたことではなくて、狼のほうにあります」 「狼がどうした?」 「あたしが助けた狼は、銀狼。このものたちは、国内ではなく、もっと北西のほうにいます」 「なぜ国内に銀狼がいるのかが気になる――というのだな?」 「はい。銀狼は母と仔でいましたが、まだ幼い狼がいる母狼なら、なおさら自分の縄張りより外にでることはありません。なのに、はるかに遠く、この地まで入ってきたのには、何か訳があるはずです」 「銀狼の生息地で何かあったということか?」 「その可能性が高いと思います。しかも、その商人は、銀狼を狩るときに、『献上する』と申しておりました。王の牧場でわざわざ狩りをして王に献上するのも変です」
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