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 めったにひとを褒めないマガンに褒められたので、マヒワは少しうれしかった。 「さすがお嬢さま。目の付け所が違いますねぇ。まあ、方言や顔つき、身につけているものは、いくらかは誤魔化せるってぇもんでしょうが、馬の方はそう簡単にいきません。馬の線であたってみるのが正解だと、あっしも思いやす」  とバンのほうは手放しでマヒワの推論をほめちぎった。  それをきいたマガンが苦笑いして、「それでは、あとをまかせるが、よいな」とバンに言った。 「なぁに、すぐにわかります。その珍しい馬の入手経路をたどれば、どこのどいつか、簡単でしょう」  とバンは返事をしつつ、どのように調査を進めるか、もう考えはじめたようだった。 「それで、廻国修行の件だが――」  マガンは、マヒワの考えている廻国修行が、白沙通商連合の探索に適しているか気になったので、「どこを廻るつもりだ」と確認した。 「はい、しばらくは国内の白沙通商連合との交易路を廻ります。その後は、一番近くの都市国家との国境あたりまで足を伸ばそうかと」 「羅秦国中に御光流剣術の修練場がある。師範はいずれもここで修行したことのある者たちばかりじゃ。慣れるまでは同門に仕合を申し込んでみるがよい」 「はい。いずれは他の武術とも積極的に交流し、技量を高めたいと思います」  といったあと、マヒワは居住まいを正し、言葉を続ける。 「――言葉にはなかなか表現できないのですが、なにやら大きなうねりが迫っているような気がしてなりません」 「実を言うとな、(わし)もだよ。なにかこう、真綿で首を絞められるような、なんともいいようのない不安がな、ふとしたおりに生じてくる……」
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