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「狼の件も、そのひとつのような気がします」 「あながち外れてはおらんだろう……。よい、廻国修行を許可する」  マガンの許可を得ると、マヒワは、剣を自分の前に両手で捧げ持つ、剣士の礼をとった。 「それぞれの流派や武術家が独自の情報網をもっている。うまくやれ」 「父上、ありがとうございます」  と礼を述べるマヒワにマガンは、 「方々で『剣聖』と持て囃されるであろうが、『剣聖』という名に捕らわれて、不覚をとらぬようにせよ」  と忠告を与えた。 「はい、肝に銘じます」 「それとな、娘よ――」  わざわざ言って聞かせるようにいうマガンに、マヒワはいぶかしげな表情になった。 「――従者として、そこのバンを連れて行け」  とマガンが、バンの方を視線を送って、いった。  突然の指名にもかかわらず、バンは「承知」と言って、落ち着いたものだ。  普段は何かとあたりの厳しいマガンではあるが、養女(むすめ)であるマヒワを大切に想う気遣いがたまに見え隠れする。  マヒワは、ゆるみそうになる口元をみられないよう、深く一礼すると、部屋を出た。
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