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酒を呑んだことがないのはもちろんだが、酔って不覚があってはいけないので断るものだから、「お呑みにならないのであれば、是非召し上がって頂きたい」としつこい輩もいたりして、辟易することも度々あった。
肝心の剣術の方はというと、稽古熱心で器用で上手な門弟の一人か二人はいるものの、抜きん出た技量をもった門弟に出会うことは無かった。
ひとつには、家元であるマガンが直々に指導する修練場の格と内弟子たちの技量が高すぎるのである。
地元の師範たちも一度はマガンの元で厳しく鍛錬を積んでいるはずであるが、自分のところの修練場で教えているうちに師範自身の成長も止まってしまうようで、マヒワが唸るほどの技を持つ師範に巡り会うことは皆無であった。
――これでは、何のための廻国修行なのやら……。
「御光流ばかりを巡っているようではだめね。おじさん、ほかの剣術の流派とか、武術とかとやりたいよぅ」
とマヒワはバンにこぼした。
そして、その願いは、思いのほか早く叶うこととなった。
ロウライという交易拠点の大都市に入る前のことである。
マヒワたちはタイゲン村に宿をとっていた。
タイゲン村の修行人宿は、部屋数こそ多かったものの、一般客の宿と兼用であった。
つまり、この村には宿屋が一軒しかなかったのだ。
部屋に入ったマヒワのところに、宿屋の主人が挨拶に来た。
御光流の剣聖の名は、このような小さな街にも響き渡っているらしい。
しかも今回はそれだけで終わらず、主人が言うには、「この村にも剣聖がいる」とのこと。
マヒワとしては、俄然興味が湧いた。
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