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 まだ陽が高かったので、マヒワとバンは出歩くことにした。  少し見て歩いてすぐにわかったことなのだが、一軒だけ抜きんでて敷地の広い屋敷があった。  街道から少し離れた高台のうえにあるので、見方によっては、タイゲン村の領主の屋敷であるかのように思えた。  村全体を見て歩くのにそれほど時間もかからず、宿屋の一階が、この村で唯一の食堂兼居酒屋であることがわかった。  食堂兼居酒屋を切り盛りしているのは宿屋の主人ではなく、専属のおやじがいた。  この食堂には地元の人たちはあまり来ないようで、酒も店では呑まずに量り売りで分けてもらって自宅で呑むらしい。  マヒワとバンが食堂兼居酒屋のおやじと、このような村の習慣を話していると、通りの向こうから剣士の集団がやって来るのが見えた。 「ひぃ、ふぅ、みぃ……。八人いるわね、おじさん」  マヒワの言葉に、バンが頷く。 「村の中を見廻りでもしてるんですかね。ただ単に散歩中という訳ではなさそうな……。それに、やつらの目つき、あまりよろしくないようで」  バンの言葉に、今度はマヒワが頷く。 「ありゃ、お屋敷の連中ですね。ほら、高台の――」  とおやじが応じる。 「へぇ、あの大きいお屋敷は、剣術の修練場だったんですか」 「双極流(そうきょくりゅう)とかいう流派のお家元のお屋敷がありましてね。それで、全国各地から双極流を学ぶ人が集まってくるんですよ」  さらにおやじは「――おかげで、ここも儲けさせてもらってるんですがね……」と言葉を続けるが、どことなく感謝はしていない雰囲気だ。  その理由もすぐにわかった。 「おい、おやじ。あとで酒を持ってこい、いつもの倍だ!」
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