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と応じるバンは、マヒワの微妙な変化に気づいていない。
とりあえず話がまとまったので、二人で宿屋の主人を訪ねた。
実直だが気の弱そうな宿屋の主人は、二人が苦情を言いに来たものと思い込み、相手がマガン元帥の身内だけにカチンコチンに固まっていたが、話を聞くうちに今度は仇討ちの話でカチンコチンになった。
主人の尋常でない固まりように、二人のほうが気を遣った。
「そんなに真剣に考えないでください。あとは、あっしたちが何とかしますから」
「そのために、少しだけ確認したいことがあるんですけど、よろしいでしょうか?」
「はい、それはもう。お答えできることであれば、なんなりと」
「あたしたちの、隣の部屋の方なんですけど、あたしと同じ武術家でしょうか? それとも一般のお客さんですか?」
宿屋の主人は宿帳を繰りながら確認すると、記憶が甦ったようで、「――はい、お隣の部屋に入られた方は、拳術家だと伺っております」と答えた。
「この村には、何をしに来られたのか、おっしゃってました?」
「詳しくは聞いておりませんが、何でも、お知り合いに、会いに来られたのだとか」
――相手のほうも知り合いと思ってるか、怪しいもんだわ。
とマヒワは心の中でつぶやく。
「それで、あまりにも独り言が多くて、しかもそれが大声なので、できれば、部屋を替えていただきたいんですけれど、お願いできますか?」
「そのようにしたいのはやまやまでございますが、この村には、なにぶん手前の宿屋しかございませんもので、お部屋は満室でございます。たいへん申し上げ難いのですが、替えのお部屋はございませんのです。はい」
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