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期待はしていなかったので、予想どおりの展開というところか。
「それにしても、あたしたちの部屋は、なぜ、一つ跳びになったのですか?」
「んー。何ででしたかね……」
宿屋の主人はしばらく考えていたが思い出せなかったようで、結局は宿帳をさらにめくって記憶を遡った。
「そうそう。マヒワ様のお部屋にお客様が泊まってらっしゃったのですが、予定よりもご出立が遅れていたところ、その間にあの拳術家の方がお見えになったのでございます」
マヒワとバンには、先客の出立の遅れと隣の部屋の関連性が見いだせなかったので、怪訝な顔をした。
「拳術家の方、お名前を長元坊と名乗られましたが。その長元坊様は、マヒワ様のお部屋をご希望でしたので、空いていないことをお伝えすると、隣の部屋で構わないとおっしゃったのです」
「ちょーげんぼー?」
名前にしては、この国ではあまり聞き慣れない響きだ。
「長元坊。頭を丸めたれたお坊さまのようです」
と宿屋の主人が補足した。
「それじゃぁ、教義的にも、ますます仇討ちはまずいんじゃぁねぇか」
バンは、頭を丸めたお坊さまがどのような教えを守っているのかを知っているようだった。
「――その後、あの部屋が空いて、あたしたちが到着したのですね」
名前で話が脱線しかけたので、マヒワが元に戻した。
「左様でございます。そのときには、長元坊様は外出なさっておいででした」
「そして、長元坊さんが帰ってきたときには、あたしたちが外出していた、と」
「はい、左様で。それで、かようなお部屋の並びになっております」
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