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 状況的にはその集団が犯人である可能性は極めて高かったが、捜査を重ねたものの確かな物的証拠が掴めなかった。  証拠が掴めない以上、治安部隊も剣士の集団による犯行と断定できなかった。 「その剣士の集団というのが、双極流のやつらだったんです」 「その手の連中ならば、ほかにもやらかしていそうだが、やはり証拠が掴めなかったのか? それとも、被害者が訴えなかったのか……?」  長元坊の話を聞いていたバンが、更に掘り下げていく。 「被害者は旅をしている者に限られていたようです――」  バンは頷いて、長元坊に先を促す。 「街道から離れた人もめったに通らないところに連れて行って殺し、身ぐるみ剥がして、野っ原や山林に晒しておく――。これが奴らの常套手段です」 「ははぁん。身元がわかりそうな物をすべて盗っていって、死体は鳥や獣に始末させるのか」 「そのとおりです。師匠は殺されてから発見が早かったので、師匠だと確認できたのですが、そのときには烏に眼などをやられて、それはもう無残なお姿に……」 「うわぁぁ、気分悪いわ。吐きそう」  マヒワは本当に両手で口を覆って、えずいている。 「さっき御坊はお部屋で、ようやく遇えた、師匠の導きだ、とかおっしゃってましたね。ありゃ、どういうことで?」  マヒワと違ってバンに変化は見られない。むしろ、仕事中といった感じだ。 「そんなに大きな声でしたか? 参ったな……。師匠からは常に平常心でいるようにと教えられましたが、全然修行が足りていませんね」 「まぁ、自分の一番大切な人がひどい目に遭ったのだから、平常心でいられるわけありませんわな」
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