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「あたしも、そんな状況で平気でいられる人なんかには近づきたくないわ」 「そういっていただけると、多少は救われます。でも、わたしにとって師匠の教えは絶対なのです」 「そりゃ、そういう心構えは師弟関係に必要なことですがねぇ」 「長元坊さんにとっては、師匠は自分そのものなんでしょ」 「そうです! 師匠がわたしを作ってくれたのです!」 「なんだかわかりにくいけど、師匠がいてくれたから、いまの自分があるってことかな?」  マヒワの理解の仕方に、長元坊は大きく頷く。 「やっぱり、あなたたちに話を聞いていただいて、よかったです!」 「話が横道にそれてきたようですが、ゴロツキに遇えたのも、お導きだってぇのは?」 「わたしは双極流の奴らを追って、この村にたどり着きました。そして、奴らの内の一人が身につけているものが、師匠のものだったんです」 「装身具なら似たようなものがたくさんあるのでは? 見間違えじゃないと断言できますかい?」  仕事柄、バンはこのあたりの曖昧さを嫌う。絶対と言いきるなら絶対の根拠がほしい。 「断言できます!」  と長元坊は語気を強めて、「お二人は、符呪(ふじゅ)のことをご存じですか?」と逆に尋ねた。  マヒワとバンは、顔を見合わせて、お互い首を横に振る。 「詳しくは知りません。なにか物に念を込めて、不思議なちからを持たせることができるらしい、程度です」  マヒワが知っている限りのことを伝える。 「わたしも正確かどうかわかりませんが、念を込めるのは宝石などの特別な石で、これを貴石(きせき)というのですが、その貴石を物にはめ込んで、特殊なちからを発揮させることを符呪というらしいです」
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