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 ほう――、という顔をする二人。 「貴石に符呪できるのは符呪師だけで、符呪師が符呪した貴石は唯一無二の物になります」  ほほう――、と感心する二人。 「師匠の持っていた水晶数珠の腕輪が符呪されたものでした。水晶珠が二十四面仕上げであることと、一つだけが黄水晶なのが特徴です」 「でも、それだけじゃ、この世に一つと言い切れるかなぁ?」 「符呪されているって、どうしてわかるんで?」  なかなか二人とも容赦ない。 「符呪されているかどうかは、符呪師しかわかりません」  なんだぁ、わからんのかい――、と声を揃えて言いたいのを二人はぐっとこらえた。 「師匠の数珠の符呪は、『教え、導く』と聞きました」  長元坊は師匠からそう聞かされた情景を思い出しながら言った。 「あの数珠に施された符呪のちからで、わたしは犯人の元まで導かれ、こいつが犯人だと判ったんです!」  と長元坊は気合いを籠めて断言した。  それに対して、バンは鼻から息を漏らし、椅子に深く座り直した。  マヒワも空中に視線を漂わせる。  いいたいことはわかるが、証拠とするには無理がある、のである。  一方、長元坊は、これで相手は納得し、ようやく仇討ちができる、と思い込んでいる。  ――符呪のちからは本当に効力を発揮しているのだろうか……?  ――これでは、「この石を肩に載せれば肩こりがとれる」というのと、どこが違うのか……?  信じる者は「効いてる」と主張するし、そうでない者はどちらとも言えない、と思うだろう。  つまり、長元坊の仇討ちは是が非でも思い留まらせねばならない、ということだ。
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