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 今回も部屋の中で悔し涙を流して瞼を腫らしているに違いない、とバンには判る。  ――お父さんに「強くなる」と約束したのに、果たせていない……。  ――人々から「剣聖」と呼ばれるほど強くなったけれども、自分のことを一番に認めてほしいお父さんはいない……。  ――どれだけ強くなれば、お父さんは認めてくれるの……?  マヒワが自分の強さを認めてほしいのは、「お父さん」のイカルだけなのだ。  バンやマガンがいくら頑張っても、マヒワの本当の父親にはなれない。 「お嬢の願いを、どうか叶えてやっておくんなせぇ……」  バンは自分のちから不足を思い知るたび、こころのなかでイカルに語りかけた。
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