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 そこへ居酒屋のおやじが水を置いていった。  ―――やじさん、すばらしいお仕事です!  マヒワはおやじに親指を立てて笑顔を贈った。  マヒワは有無を言わせず、バンに水を飲ませる。 「あのね、おじさん、聞いて!」  マヒワが真剣な表情で言うものだから、バンは仕方なく聞く姿勢になる。 「あたしは双極流のことを何も知らない。知らないから、坊に何を教えたらいいのかわからない。的確な稽古ができなければ、坊はやられてしまう。でしょ?」 「それは、まぁ、わかりますがねぇ」 「それにこれは御光流と双極流の闘いでもあるの。あたしは御光流の剣聖。あちらは双極流の剣聖。強い剣術はどっちなのか、確かめずにはいられません」  以上、話は終わり――、とマヒワは席を立った。  その後、湯殿に向かったマヒワが、いつもより念入りに手を洗ったことは言うまでもない。
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