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「そうなるわね。あのゴロツキどものところじゃないみたい」 「まずはひと安心、といいたいところですがね、くれぐれもお気をつけて」 「おじさんは、長元坊を見張ってて」 「坊はまだ部屋で休んでいるようで。昨日の傷がまだ痛むんでしょう」  そのあと二人は連絡方法などを話し合った。  簡単に打ち合わせを済ませると、マヒワは急いで食堂に戻った。  宿屋の主人のはからいで、ビンズィは席に座ってお茶を飲んでいた。  せまい村だから、お互い顔見知りのようだ。 「大変お待たせいたしました。ご案内、お願いします」  マヒワはビンズィにお辞儀をして、案内を請うた。  行き先は、言わずと知れた高台の屋敷であった。  道みち珍しい風景があったので、それを話題にして歩みを進めていたら、思いのほか早く着いた。  マヒワの案内された先は、敷地内にある離れの家屋だった。  離れの建屋と庭は竹の垣根に囲われており、一画を成している。  建屋は平屋建てで、庭が一望できるように居室の間口を広くとった造りになっていた。  穏やかな日差しに庭に植えられた木々が色めいている。  その庭の草木を屋敷のなかから眺めている老人がいた。  普段は横になっているようだが、いまは寝台の上に背もたれを高くして、上体を起こしていた。  マヒワはビンズィに庭のほうから案内された。  庭を眺めていた老人と目があった。  マヒワは歩みを止めて、老人に軽く一礼した。  ビンズィがマヒワから離れて、老人のところに行き、耳元で何事か囁いた。  ビンズィの口の動きに合わせて、老人の頷くのが見えた。 「どうぞこちらへ」  ビンズィがマヒワを老人の傍に誘う。
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