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 マヒワは雷拳のことに触れるわけにはいかないと思い、我ながら苦しい説明をした。 「身をもって体験するのが一番だと。――うむ」  アオジの視線は射貫くように鋭い。 「双極流と御光流は、一対多の剣術でありながら、術理は真逆。まさか、マヒワ殿は双極流に喧嘩を売りにきたのではあるまいな?」  半分当たっているが、マヒワの口から「はい、そうです」といえるはずがない。  マヒワはアオジから目線をそらさず、耐えた。  二人のあいだの空気が張り詰めていく。  たまらずマヒワが口を開こうとしたとき、 「いや、なかなかの胆力じゃ。気に入った」  とアオジに気勢をいなされた。  口惜しいが、やはり相手のほうが一枚上手だ。  実際マヒワは、大きく息を吐くと、 「わかりました。一切をお話しします。しかしながら、これから申し上げる内容は、ご宗家に、おこころ苦しいご判断をお願いすることになろうかと存じます」 「うむ……聞かせてもらおう」  実は――、と前置きして、マヒワは長元坊の師匠が殺害されたことと、彼が仇討ちを思い詰めるまでの経緯を語った。  マヒワの話が終わったあとも、アオジは空中の一点を睨み続けていた。  唇をかみしめている。  やがて、目尻ににじむものがあった。  アオジが、一言一言しぼるように、心中を吐き出した。 「雷拳の師匠はな……、湛界坊(たんかいぼう)という。儂のな、友であった……」  アオジは涙がこぼれ落ちるのを堪えた。 「アインよ。お前は、そこまで愚かであったか……。許せ、湛界坊。……許せよ」
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