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長元坊は、師匠が雷拳の技で剣に勝ったと信じている。
ビンズィがアオジの返事を待った。
アオジがビンズィに頷く。
ビンズィは剣でアインを牽制しつつ後ろへ下がり、十分に距離をとったところで奪った剣を床に置いた。
そのまま、さらに間合いを開けた。
アインは、ビンズィとマヒワに警戒しながら足を運び、剣を掴んだ。
長元坊はその間に立ち上がていた。
アインは完全に長元坊を侮っている様子だった。
アインは剣を正面に構えた。
その腰の高さと足の開き具合から、突きを放って、速攻で片をつけるつもりであることが、マヒワには判った。
マヒワは助勢したいのを我慢した。
これは雷拳の名誉をかけた闘いなのだ。
しかし、長元坊は、昨日の痛手がまだ癒えていないのは明らかだった。
先ほど一方的にやられていたのも、その所為だろう。
そんなぼろぼろのからだでいながら、長元坊は膝を緩め、腰を低くして、両方の拳を顔の前に立てた。
マヒワには、見覚えのある構えだ。
長元坊は、拳を解いて平手に変え、右手をアインに向けた。
手先で、こいこいと煽って、アインを挑発する。
アインが誘いに乗った――。
床を踏みならす音が響き、突きが放たれた。
迫ってきた剣先を、長元坊は差し出した右手でたぐり寄せるようにいなして、アインの懐に飛び込んだ。
二人が重なり、雷鳴が響いた。
――これが雷拳!
マヒワに戦慄が走った。
顔面に三発、肋骨底部に一発、股間に一発、最後は両腕を抱えて投げを打つ。
これだけの攻撃が一瞬の連打で一つになり、雷鳴のように聞こえるのだ。
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