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「い、行くに決まってるし」
可愛くない私は、挑発に乗って強がって見せた。
高遠くんは「だよな」と、ニッと整った歯を見せて笑った。
結局、「絶対に無理!」というマドカを置いて、私たちは五人で"死霊の館"だという洋館へ足を踏み入れた。
土壇場で逃げ出さないようにと、ハガくんとマコに両脇をホールドされて連れて行かれる半泣きのマナブ。そして、その後を高遠くんと私がついていく。
本当は怖くて入りたくなかったけれど、高遠くんに「行くだろ?」なんて真っすぐ見つめられたら、断れるわけがない。私は高遠くんに絶賛片想い中なのだ。
私は震える足をどうにか一歩一歩進めていく。
ピカピカと稲光りに見立てたライトが光り、雷鳴の重低音が腹の底に響く。
暗闇の中、所々の赤とか緑の不気味な照明を頼りにおずおずと進む。風の音や、ギギギと扉の開く音、気味の悪い子供の笑い声が聞こえる。
「ふぇ…」
私は薄目で足元だけを見るようにして、どうにか前に進んだ。
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