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高遠くんは「何、ビビったの?だっせ~」と、笑っている。
私は「う、うるさいな」と言いながらも、半べそで無意識に高遠くんのTシャツの裾に手がのびる。
高遠くんの笑い声に少し気持ちが落ち着いていくのと同時に、行かないでいてくれたんだ……と嬉しくなった。
「あ~…後れをとったな。行くぞ」
「…うん」
ひとまず安堵したのも束の間、やはり次々に驚かせてくる死霊たち。マネキンなのだろうけれど、造形がリアルで怖しい。先ほど目の前に現れた女の死霊の恨めしそうな顔が、いつまでも私のマインドを追いかけてくる。
やっぱり怖い怖い怖い……
自然と手に力がこもる。
「ちょ…日向、苦しいって……服、のびるから引っ張んなって」
高遠くんの慌てた声に、私はハッと我にかえる。
私は恐怖のあまり、無意識に高遠くんのTシャツの裾を引っ張っていたようだ。
「ご、ごめん」
私はTシャツを引っ張る手の力を緩めた。
心細くて、どうしてもそばにいて欲しくて、Tシャツを離すことは出来なかった。
「ごめん、怖いからゴールまで……」
私は俯いたまま、震える声で素直にそうお願いした。
それなのに高遠くんは「服、のびるから嫌だ」と、冷たく言い放った。
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