それぞれの旅立ち

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「そろそろ引っ越そうと思うんだよね。」 突然、彼女がそう言ったので驚いた。 一緒に暮らして10年 仲良くやってきたつもりだったのに そう思ってたのは僕だけだったのか。 「驚いた?別にキライになった訳じゃないよ。だけど…」 と彼女は微笑みながら言葉を詰まらせた。 だったら何故出ていくのか?理由が分からない。 「ココにいるとツラいの。泣きたくなるの。」 そう言った彼女の肩が小さく震えてるように見えた。 また、泣かせてしまった。最近、僕は彼女を泣かせてばかりいる。そばに居るのに優しく抱きしめてあげる事もできない。 「私がココにいると、あなたもアッチに行けないでしょ?」 「アッチ??」 嗚呼、そうか・・・ 僕は彼女が心配でココに居座り続けていた。 僕は半年前に突然の事故で死んでしまったのに・・・。 「安心して。引越したからってアナタを忘れる訳じゃないから。心の中にずっと住み続けてるからね。」 そう言って彼女は僕の方を見て微笑んだ。 見えてはいないのだろうけれど・・・。 僕も彼女を安心させるためにそろそろアッチへ引越しをするとしよう。 ─完─
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