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そんな日々が続くうち、みおの心が青山に傾くようになった。みおは開けっ広げな性格で、ストレートに青山に言い寄った。青山は劇団の恋愛禁止のルールを盾に取ろうとしたが、心の中ではみおに引かれていたので、二人が恋人になるのは時間の問題だった。
ある日、一線を越えた夜、青山はみおに言った。
「劇団は恋愛禁止というのは知ってるよね。もしばれたら二人とも居れなくなる。だから俺たちの関係は絶対に秘密だ」
「わかった」
みおはやがて青山のアパートで暮らすようになった。みおに役がつくことが多くなるのとは裏腹に、青山は主要な役から外されることが多くなった。青山はそれに対して怒ったり、悩んだりすることがだんだんなくなっていった。
その翌年、冬の公演が二ヶ月先と決まったとき、青山は今度も主要キャストから外されてしまった。ちょうどその頃、青山はバイト先のレストランのオーナーから気に入られて、正社員として働いてみないか、その気があれば店長として採用したいと言われた。
青山は即答を避けた。
その日の夕食後、青山はみおに打ち明けた。
「みお、俺と結婚してくれないか」
「ええっ、どうしたの? 突然、そんなことを言うなんて」
「俺の中では突然ではないんだ。実は、今日オーナーに言われた。その気があれば、店長として採用したいと。生活に困ることはないんだ」
みおはすぐに核心に触れて来た。
「劇団はどうするの? 店長になったら両立できないじゃない」
青山は皮肉な微笑を浮かべた。
「辞めるよ」
みおの両目が見開かれた。
「そんな! 八年も苦労して来たのに……」
青山はきまり悪げに苦笑した。
「逆に言えば、八年もやって芽が出ないんだから、才能がなかったのさ。諦めるちょうどいい機会だ」
「だって、福島さんや中川さんはどうするの?」
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