遮断機の向こう側にはほとんど君がいる。

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 ピピピピ。いつもと同じ時計の音で目を覚ます。秋。だんだんと肌寒いと感じる日が増えてきた。朝ごはんを食べにリビングへ向かう。 「今日の星座占いです」  テレビからそんな声が聞こえる。占いなんてあまり信じないけど。 「今日の一位はおうし座です。おめでとうございます」  今日は何かいいことがあるのかもしれない。 「あいさつをすると運勢が上がるかも。そしてごめんなさい。十二位は…」  あいさつか。学ランを着ながらそう考えた。  今日もいつもの通学路を自転車をこいで進む。昨日もおとといもいつもの踏切に彼女はいた。今日はいるのだろうか。  踏切が見え始める。今日も電車が通り過ぎていく。踏切越しに彼女の姿をとらえた。目が合った。鼓動が少し速くなる。  今日は会釈をしてみた。特に意味はない。すると彼女も会釈をし返してくれた。彼女は少し微笑んでいた気がした。僕は前を向いて自転車を押し始めた。   久しぶりに彼女との距離が少しだけ縮まったような気がした。会釈をしただけ。そんな些細なこと。  だけど、そんな些細な変化を大切に噛みしめていくことが生きる意味になるのではないかと思った。
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