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お茶の時間
養育費は『足長おじさん』が、毎月二人に用意してくれた。ひろみは固辞したが、まゆが子どものためにと説得して同じように貰うこととなったので、生活にもゆとりができた。
そうしてもうすぐ子ども達が歩き始めるかという冬のある日、いつもぐっすり昼寝をしている時間帯の、二人のささやかなティータイムを今日はまゆの部屋で開く番であった。
そんな時は、ひろみが手土産と称して近所のケーキ屋から買って持ってくることになっていた。逆にひろみの部屋の時は、まゆが買っていくのだ。
「あれ?ひなちゃんは?」
いつもこの時間は昼寝をしているまゆの子どものひなの姿が見えず、部屋が静かでひんやりと感じたので、ひろみが不思議そうに聞いてきた。
「今日は、来る日なんだ」
ばつが悪そうに、まゆが言い淀んだ。
「あぁ…そうなの。言ってくれれば預かったのに。おばちゃんに預けたの?」
時折り金の無心をしに、まゆのところに近頃チンピラが来るようになったらしい。どうやら、兄弟の誰かがサラ金から借りたようだと言っていたが。あまり言いたくない事を根掘り葉掘り聞くことも躊躇われたので、ひろみは黙って見守っていた。そのうち相談されたら、対応しようと考えていた。
「うん…。ひなには見せたくないから。」
「ま、ケーキ食べよ。まゆの好きな苺ショートケーキもあるよ。」
「ごめんね…ひろみ。さらちゃんは、お昼寝した?」
「うん、いつものようにぐっすりよ。お利口で助かるわ。」
そうして、二人はいつものようにたわいのない昔話をしたりして、冬の柔らかい日差しの中でお茶を楽しんでいた。
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