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歳月
あれから10年近くの歳月が流れた。
ひろみとは、あの日を境にまゆは顔を一度も合わせていない。
出火の原因は、籠から誤って飛び出した鳥がカーテンを揺らして、本来なら火が当たる筈のないストーブに掛かって引火の原因となったと考えられた。
鳥の死骸が、鳥籠の中になかったことや、ストーブにかかる筈のないようなカーテンの場所に焼跡が一番強く残っていたことなどから推察されたのだった。
ひろみの精神は闇に堕ち、そんな中で双子のように育ったまゆの子どもだけが生き残っているなど、見せられはしなかったからだ。
ひろみに会うのが怖かった。
まゆはホステスのバイト先にも、あれから一度も戻らなかった。
焼け出された事もあり、逃げるように『足長おじさん』を頼って、娘のひなと青い小鳥を連れて彼の所有するマンションの一室へと移り住んだ。
彼は妻のある身だったが、よくしてもらって今日まで何不自由なく生きて来られた。
彼も、さらの死がよほどこたえたと見えて、しばらくはひなの顔を見に来ることもしなかったが、2年3年と経つうちに、ひなを正式に認知して養女とした。妻にも知らせ、ひなには父親らしく接するようになった。
まゆは妻公認の愛人のままだったが、それでも贅沢な暮らしに満足している。
そんな時だった。思いがけず、ひろみと再開することになったのは。
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