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ひな
何気なくつけていたTVの歌番組で、忘れもしない声が流れてきたのだった。
「ひろみ⁈」
独特な波を打つような美しい響きは、ひろみの声に違いなかった。
TVに駆け寄ると、そのシンガーソングライターは、遅咲きながらも今最も注目を浴びる歌手としてスポットライトを浴び、紛れもないオーラを纏った姿を見せて歌っている。
「あぁ、やっぱり!ひろみだわ!!」
歌手の名前は『HILO』とテロップされ、曲名は『ひな鳥の詩』だった。
さらさらと流れる色々な言葉を駆使した卓越した歌詞と、心に沁み渡る愛情と憂いを帯びたメロディーがすぐさま人々の記憶に残る。
そしてそれを色づける、あの波打つ声。海を渡り、異国へと響くようなあの浜辺の歌声が今世界へと流れていっている。
その姿を見て、まゆは唇を噛み締めたまま動けなくなっていた。
そんなまゆを横で見ていたひなが、不思議そうにママ?と声をかけて怯えるように手を伸ばした。
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