【短編読切ホラー】殺人お届けします

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 入ると赤いバスタブに、御手洗は浸かっていた。  「御手洗!」  声をかけるとピクリと指がかすかに動いた。息はまだある。佐藤は急いで救急車を手配し、くる間になにがあったのか探るために部屋を見た。予想通り、そこには赤い封筒と写真が大量に散らばっていた。  「そういうことか」  御手洗は届いたあの赤い封筒を開けたのだろう。似たようなものが、何通もきていたのかもしれない。御手洗の恋人が別の相手と浮気している写真が、ベッドの上に大量にあった。その写真に絶望した御手洗は恋人を殺す方向ではなく、自殺をしようとしたのだろう。  佐藤の迅速な対応で、御手洗はなんとか一命をとりとめた。その後、より詳しく写真を調べてみると、その写真は予想通り合成だった。  付き合っている彼氏彼女、夫や妻を隠し撮りし、見知らぬだれかとあたかも浮気したかのように誤解をさせる。もしかしたら自分に内緒で浮気をしているのでは、と疑心暗鬼になっている人ならば引っかかってしまうかもしれない。   ――今回の御手洗のように。  幸いにも御手洗は殺しでなく、自死に走る人間だったが、一歩間違えればまた死者が増えるところだった。    偽装した浮気現場の写真をばら撒く悪意ある悪戯。防犯カメラがあるところには投函されていないので、この赤い封筒を誰が入れたかはもう明白だった。  殺人の連鎖の犯人。  直接ではないが、間接的に事件を起こした犯人。  赤い封筒を握り締め、佐藤はあの配達員と話をしたアパートへと向かうべく署を後にした。
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